2016年6月30日 和歌に詠われた花
恋の歌に詠まれたネジバナ
東洋計器本社の玄関横に、ネジバナが咲きました。
その名の通りくるくるとらせん状に、5ミリほどの小さな花をつけています。こんなに小さな花ですが、ランの仲間で、ごく近くで観察すると確かにランの花と同じ花の形をしています。
ピンク色の花が一般的ですが、今年は希少な白色のネジバナも2本咲いていました!
実はこの花、百人一首に登場します。
「 陸奥(みちのく)の しのぶもぢずり 誰ゆゑに
乱れそめにし 我ならなくに 」
河原左大臣 古今集(巻14・恋4・724)
ネジバナの別名がモジズリであり、「もぢずり」とはネジバナのことを指しているという説があります。
「ネジバナのように私の心が乱れるのは、あなたのせいですよ」という意味のようです。
ネジバナを、恋をして乱れる心に例えるとは、昔の人はとてもロマンチックで感性が豊かですね。
また、万葉集でも想い人の例えとして登場します。
「 芝付(しばつき)の 御宇良崎(みうらさき)なる
ねつこ草 相見(あいみ)ずあれば 我れ恋ひめやも 」
よみ人しらず 万葉集(巻14-3508)
この「ねつこ草(ねっこ草)」がネジバナのことで、「三浦崎に咲くねっこ草のようなかわいいあの娘と会っていなかったなら、こんなに想い募ることもなかったのに」という意味の歌のようです。
(ねっこ草は翁草という他の植物を指す説もあり)
この歌を詠んだ人の気持ちも分かるほど、かわいらしいお花です。
ネジバナは日当たりの良い芝生で見ることができます。高さ20センチほどの細く小さな花なので、知らなければ他の草花に混ざって見過ごしてしまいそうですが、千年以上も前から親しまれてきた身近な花なのですね。