2024年4月9日 株式会社クボタ工業用はかり寄贈式
桜の蕾も膨らんできた4月5日に、東洋計量史資料館は株式会社クボタが製造した貴重な工業用はかり5点の寄贈を受け、寄贈式を開催しました。歴史的な役割を果たしてきた工業用はかりを後世に残すため、東洋計量史資料館で長く保存していきます。
※本寄贈式は、株式会社クボタはかり事業100周年記念事業の一環として実施されました。
寄贈式では、はじめに館長を務める弊社会長 土田より「ものが無くなるということは、技術が無くなるということ。国内外の計量の歴史を未来に伝える資料館として、長く後世に残し、人間の知恵を伝えていきたい。願わくは、松本を秤の都にしたい。」とご挨拶させていただきました。
その後、株式会社クボタ・ご来賓の方々のご挨拶や目録授与、テープカットが行われ、寄贈工業用はかりと東洋計量史資料館を見学いただきました。
この度寄贈された工業用はかりは、次の通りです。
①手動さおはかり(予測計付き、印字装置付き)
・B型レジスター予測計付き計重部
・1937(昭和12)年販売開始
複数の送り錘を手動レバーで操作し、さおの平衡をとる構造により、安定して高精度計量を維持。トラックスケールや貨車スケールなどに使用されました。戦前のはかりですが、機械式はかりに印字装置を付加したことも大きな特長です。
②多回転指示・振り子式計重部
・CR-3型計重部
・1969(昭和44)年販売開始
振り子式指示はかりシリーズの最終版。指針を3回転させ目盛数を3倍に増やしました。精度向上や平衡時間の短縮を図るため、オイルダンパー・マグネットダンパーなどを導入しています。ひょう量30t、最小目盛10kg(1/3000)の高精度化をトラックスケールで実現しました。
③さお式自動送錘・差動平衡型
・HA(ハイアック)型計量重部
・1965(昭和40)年販売開始
自動送錘はかりで、サーボ機構により、平衡時間の短縮化、工業はかりとして1/10000の最高精度を図っています。支点には弾性支点(板バネ)を導入しました。1970年の大阪万博では、はかりに乗った来場者が牛乳を飲んだだけで、体重の変化が分かりました。
④光電式・振り子式計重部
・CR-75型レジスタ計量装置
・1975(昭和50)年販売開始
平衡点までの変位を光電素子で取り出し、パルス信号に変換しデジタル方式で計数するため、アナログ式と比べ読み取りが容易になります。風袋分を引くなども簡単に行えるようになりました。
⑤ベルトコンベヤ用積算式計重部
・メリック円盤式コンベヤスケール
・1955(昭和30)年頃販売開始
ベルトコンベヤ上を移動する対象物の重量を連続的に計量できるはかりです。ベルトコンベヤの移動に伴い回転するディスクとその傾斜角から重量を算定、本州四国連絡橋建設時の基礎用コンクリート材料の連続計量などでも活躍しました。
株式会社クボタの関係者様には岩田重雄博士(日本計量史学会元会長)が収集された1万点以上におよぶ書物もご覧いただき、皆様大変感心されていました。
『計量は文明の母である』『文明は計ることから始まった』
日本計量史学会元会長で日本計量史学会創始者の一人でもある、岩田博士の言葉です。古い度量衡は、計ることに対する人間の叡智を示す貴重なものです。その歴史と「計ること」の大切さを後世に伝えていくべく、私たち東洋計器は東洋計量史資料館を運営しています。
今後も可能な限り企業メセナ活動を進めてまいりますので、松本へお越しの際はぜひ東洋計量史資料館へお立ち寄りください。